2004年10月 トロント トロット ■カナダ往復編
 HELLO−!
 カナダでの仕事を一時休業して北米大陸プチジャーニー中のマサシです。

 世界でも名高い東カナダの紅葉期間中に、東カナダを回れるだけ回ってしまおうというのが今回一番の狙いです。東カナダもほとんどの見所を回り終え、ケベック州モントリオールで紅葉も堪能することができたので、後は行き残したところを回りながら僕がカナダの拠点としている西カナダのバンフに戻るところなのです。

 ケベック州モントリオールを出た後はオンタリオ州「トロント」を訪れました。トロントはカナダ最大の都市で人口も多く発展している街です。
 移民の数が目立ち、電車やバスに乗っていると英語以外の外国語が飛び交っているので、英語圏にいることを忘れてしまいそうにもなります。
 西の都バンクーバーはアジアからの移民が多いのに対して、東の都トロントは中南米からの移民が多いことが特徴的です。それに付け加えお約束のようにいる中国人やインド人もわんさかいて商売に力を入れているため、経済的にも発展しているのです。

 大都会には興味がないのでとっとと通り過ぎてしまおうかと思ったのですが、再会の約束をした友達がいたので訪れることにしたのです。
 この友人というのは、東カナダを回っている途中で出会った人で、ノバスコシア州ハリファクスからルーネンバーグへ向けてレンタカーを相乗りした時のメンバーの一人でした。 
 トロント在住だったこの友人は、僕がトロントを通る時に合わせてマッサージ診察の予約をハリファックスの時点で入れていたのでした。さらに宿泊も可能と言うことだったので、再会だけでなく「お泊りコースの出張マッサージ」が成立しました。これも何かの縁だと受け止め、せっかくなので診察前にトロントを案内してもらいました。
 特に見所となるものもない大都会なので取り立てて目を引くものは無かったのですが、一応雰囲気だけ感じてきたと言ったところです。

 その中で僕の興味を引いた所は、夕食のために訪れた「インド人街」でした。
 あっ、また来たインド!、て感じなのですが、やっぱり避けては通れないような気もしました。
 通りのショーウィンドウにはサリーやパンジャビードレスが陳列され現地の10倍以上の値段で売られていました。さすがに先進国であるカナダで売られているだけあって、生地の質やデザインが少し洗練されていてレベルが高いような気がしました。
 大人気と評判なカレー屋さんでカレーを食べたのですが、これもまたレベルの高いデリケートな味付けに改良されていました。
 「本場インドカレー」と謳った、インドに住む一般市民が一生口にできないカレーに複雑な気持ちを覚えました。

 この辺のことはほとんど調べてなかったので、勘違いしていたことがりました。大きな見所の一つである「ナイアガラの滝」へはトロントから見に行くものだとばかり思い込んでいたのですが、その距離はバスで数時間も離れたところにあり、ナイアガラの滝の近くにはちゃんと「ナイアガラフォールズ」という街があるそうで、滝までも歩いて行ける治安のいい所らしいのです。トロントのユースホステルや安宿は盗難事件が多いことで知られており、できれば泊まりたくないと思っていたところでした。ナイアガラフォールズには安宿もあるとのことなので、これは行かない手はありません。
 友人との再会、そして診察を終えた翌日にナイアガラフォールズに移動しました。
 
 世界三大瀑布の一つ「ナイアガラの滝」。

「さすがっ!ものすごい迫力だったよー」
 と言う噂もあれば、
「カナダ三大がっかりの代表だね」
 という気の抜ける噂も、沢山耳にしていました。
 「世界三大がっかり名所」の中にも数え上げられているとさえ聞いたことがありました。
 よく「三大がっかり」と言う言葉を耳にしますが、三つ揃えて知っている人なんて一握りだし、人によっても言うことが違っているのが普通です。
 
 ちなみに「世界三大がっかり名所」に挙げられている所は、
「シンガポールのマーライオン」
「ベルギーの小便小僧」
そして「カナダ&アメリカのナイアガラの滝」
らしいです。
 やっぱり「がっかり」に数えられるところは前評判、知名度、肩書きが大きく影響しているようで、それらが大げさなものになればなるほど実際に目の当たりにしたときのがっかり度が大きくなるのでしょう。

 それでは「カナダ三大がっかり」とは一体なんなのでしょうか?
 考えてみたけれどなかなか絞ることができません。

 カナダで僕が感じた「期待はずれ」は「ホワイトホースでのオーロラ」や「ルーネンバーグの街並み」と言ったところでしょうか。もちろん特にしょぼいものではないし、それに思い入れが加われば素敵なものに見えてくること間違いないでしょう。
 見た人のその時の心情や経験度合いにもよるはずです。
  僕自身も、自分が勝手に喜んだ「プティーコディアック川のダイダルボーア」だったり、自分が認めたほどの「東カナダの紅葉」だったら嫌な気分になってしまうとだろうと思いました。
 独断と偏見、経験とタイミング、そして気分によって左右されてしまう人の見解とは本当に勝手なものです。

 「がっかり名所」なんて知識は耳に入れないほうがいいのでは? とも思いましたが、そんなに頭を固くする必要もないかなーとも思いましたので、「有名ではあるが大した所ではない」ぐらいに受け取っておいて、期待を大きくもたなければ実際自分が見てみて気に入ったときには、その喜びは自分の中で大きなものとして残るので、まんざら悪いものでもないかなとも受け止められました。

 ナイアガラフォールズの安宿に荷を下ろし、早速ナイアガラの滝を目指して出かけました。

 観光客のために建てられたホテルやアミューズメントパークなどの近代的な建造物が局地的にそびえる街中を抜けて歩くこと20分、立ち昇る霧とその湿度、そして唸り続ける爆音を五感が捉えました。

 最初に登場したのは通称「アメリカ滝」です。
 ナイアガラの滝はカナダとアメリカの国境に位置していて、アメリカ側にある「アメリカ滝」とカナダ側にある「カナダ滝」の2つに分かれています。
 まんまなネーミングですよね。うん、わかりやすい!
 分かれているとは言え、この2つの滝はすぐ近くにあり、どちらの国からも同時に2つの滝を眺めることができます。
 規模が大きいのはカナダ滝でカナダ側からだと2つの滝を正面から眺めることができるので、カナダ側からのほうがより堪能できると人気なのです。

 アメリカ滝を横目に歩いていると少しずつカナダ滝が近づいてきました。
 少し距離をおいてみる分には滝から立ち昇っている水しぶきが、まるで温泉街の湯煙のようなのですが、近づくにつれてそれは横向きに吹き付ける雨と化していくのです。
 瀑布に触れようとする者への最初の洗礼です。

 これだけでも風向きしだいではずぶ濡れになってしまいます。一応傘を広げ、盾のようにして突進しました。
 間近で覗き込む瀑布はなかなか見ごたえがありました。かなりの勢いで流れているはずなのにそれを感じさせない川幅は目測を嬉しく狂わせてくれます。
 
 これまで僕は何度か滝にうたれたことがあります。滝は見た目がしょぼくても、いざその中に入ると押しつぶされそうなほどの圧に驚かされるのでした。
 自然界の力をみくびっていた証拠です。
 重いバックパックを背負い、幾つも山を越えて鍛え上げたつもりの足腰も、自然界の力の前にはまるで歯が立たないことを身をもって知っていました。だからこそこの瀑布の力をより深く感じることができたのだと思います。

 とは言え、人間はどんなものにも慣れてしまうもので、しばらく眺めていると最初に感じていた緊張感は、いつの間にやら滝底深く流されてしまいました。
 そこで、ちょっと発想を変えてみることにしました。

 滝をただの滝だと思って見てしまうと、どうしてもその迫力は知識と安全性により半減してしまうので、この流れ落ちている水を「貴重な物」と想定して、何とかしていち早くこの流れを止めなくてはこの世から水かなくなってしまうーっ! と思うことにしました。
「この爆流を止める・・・」
 あれこれ試行錯誤してみましたが、どうもいいアイディアが浮かびません。
 そりゃそうですよね。その川沿いにそびえ立っている高層ビルを幾つか横倒しにしたところでどうにかなる規模のものでもないのですから。

 どんなに根性出して気張ってみても、自分にできないことはこの世にわんさか溢れています。
「自分にはできない!」
とネガティブに考え込んでしまうのではなく、
「それでは自分には何ができる?」
とポジティブに考えを進めていけたら、人生の幅が広がるような気がします。
 そしてこの「できない事実」を痛感するかのごとく認めることができれば、高い次元で「これはできる!」、「これはできない!」と分けることができ、実は挑戦してみたいが自分の中でできないと諦めている難易度の高い関門にも隙間を見出せるのではないのでしょうか?

 旅に出る前、出国のための飛行機代を鉄工所での短期のバイトで稼いでいる時のことでした。バイトの先輩から、
「英語も話せないのに外国へ行ってどうするの? 特に技術もないんでしょ? 現地で迷惑かけて戻ってくるのがオチだね」
と、これから出国しようと意気込んでいるところに嫌味を言われました。
 僕は思わず鉄工所の油仕事でどす黒く汚れた油まみれの拳を前に突き出し、
「やってみなくちゃわかりません! 自分にできないことがわかるからこそ、できることが見えてくるんです!」
 そう、生意気にも言い返してしまいました。

 あれから何年か経ち、今では肩書き旅人として多少の語学力と技術でお金を稼ぎながら外国を回っています。
 しかし、いや・・・「だから」と言うべきでしょうか? 未だ天職と呼べるような、一生涯を懸けていくに値する自分にできる範囲での最大の目標は見つかっていません。
 もちろん天職を見つけ、それをして暮らしを立てている人なんて一握りしかいないこと、解っています。ですが、自分は貧しくともその一握りの中に入ってやろうと、少し変わった道へと進路を変更したのでした。

 後戻りは・・・、できるんです。
 今からだって公務員にはなれるだろうし、鉄工所で働くことだってできます。
 でもしません。

 なぜ?
 それに答える必要はないと思います。

 もし、今から日本に帰国してあのバイトの先輩に再会したらなんと言われるのでしょうか?
「えっ!? まだ定職に就いてないの? 今まで何してたの? マジっ! 貯金も無いの? そりゃー結婚もできないよね。でっ、何かすごいことわかったの?」
 そんな「それみたことか!」ばりの嫌味に対してどう答えるのでしょうか?

「えーえー、よくわかりましたよ、自分の実力と世界の現状がね。金を稼ぐことや結婚だってその気になればいつだってできるってこともです。滝の水を塞き止めることはできませんが、どんなに倍率の高い企業や国家試験にだって一生かけてパスしてみせますよ!」
 あぁー・・・、これでは売り言葉に買い言葉ですかね。
 でもそれぐらいの覚悟はできているつもりです。

 「できること」、沢山みつけました。
 「してもいいこと」、幾つかみつかりました。
 「一生懸けていくこと」、まだ腹はくくれていません。
 「できないこと」、できることの幅を広げるために面白い比較の対象を、これからも探していきたいと思います。

 こんなナイアガラの滝を見ながら広がった空想世界のバカ話。それから引っ張ってきた過去の決意と見つめ直した現在の心情。この時間は無駄に流れた時間でもなく、立派とは言えませんが確かにその場所から感受した刺激であり充実した時間となりました。それによりレベルアップとまではいかなくとも、経験値を上げたことは間違いありません。
 ここで上げた経験値、こんなものでも旅先で見つけたことの一つです! とほざいたときに誰かの心に響くような人間になってやろう! と、落差が生み出す濁流音響きわたる中で誓いました。

「ちょっとこのバカ息子! 天職がどうのこうの言う前に定職見つけなさい! どんな国家試験にでも・・・っていいじゃないの、せっかく法学部卒業してるんだから弁護士になってちょうだい、弁護士に!」
 あ痛ぁーっ、
 こんなところにもまた一つ、重く響く再会時のやり取りがありました。

 ズレた話をコキャッと戻し、
 ここまで来たら乗っておきたいのが「霧の乙女号」です。

 「霧の乙女号」とは、船に乗って下から限界地点まで滝に近づき、見上げる滝の臨場感を楽しんでしまおうという企画。その船の名前が英語で「マーメイド・オブ・ミスト」、日本名が通称「霧の乙女号」というのです。

 このベタベタ観光企画。本当は乗るのも恥ずかしい気もするんですが、乗客全員ビニール製のポンチョを着込み、バケツで水をかぶっても大丈夫という状態で滝の近くまで行きます。そして戻ってきて船を下りた後にはその「マーメイド・オブ・ミスト」のロゴ入りポンチョがお土産としてもらえると言うことらしいのです。
 僕は手縫いで何度も修復したボロい折りたたみ傘しか雨具を持っていなかったので、今後のトレッキングのことも考えてこのポンチョが欲しくてたまりませんでした。
 こいつを口実にベタベタ企画にサラッと参加です。

 船に乗れば15分足らずで滝はすぐそこまで迫ってきます。
実際に迫っているのは船に乗っている自分達なのに、相手が巨大なためか「迫ってくる」という表現のほうがしっくりくる威圧感を感じました。

 もう一つ目を惹いたイベントがありました。それは完全に密封された球状のカプセルの中に人間が一人入り、川に流されてそのままナイアガラの滝から落ちていくという企画です。つまり、滝の上から球体がポットンポットン落とされていくのです。
 中国の万里の長城に架けられてあった、ロープに掴まり滑車で一気に下まで滑り降りる企画に匹敵するほどの「楽しそう」を通り越した「アホらしい」、風情ぶち壊しの人工企画。
 「大自然を楽しむ!」、これを見事に履き違えているのではないでしょうか?

 「ナイアガラは人工設備に塗れた大自然だよ」
 そう、噂には着ていたので「がっかり」や「ビックリ」にはいたらなかったのですが、もし絶賛された話ばかり耳にしていたら・・・。
 そう思うと、次に自分が誰かに伝えるときは気をつけなくっちゃ!、と感じさせた一大イベントでした。

 これから先、カナダを出て本格的な旅が再開すれば必然的に残りの世界三大瀑布である南米の「イグアスの滝」とアフリカの「ヴィクトリアの滝」を訪れることになるでしょう。
 そこで新たに何を感じるかはわかりませんが、
 「できることとできないことの再確認」と
 「人の心に響く人間になろうという誓い」
 この2つを思い出すことは、間違いないと思います。

 ここで頭によぎった些細な事を他の場所にて思い出す。

 これを幾度か繰り返せば「些細な学習」でも「確かな考え」へと成長するかもしれません。そうなれば、「些細な学習」は「確かな考え」を生む源となったということなので、大切な事だと言えると思います。たとえ些細過ぎるバカ話でも確実に刻みつけていき、未来に繋がるそいつを、引っ張り出すきっかけを仕掛けておくことにします。そのきっかけと言うのがこの場合「瀑布を見た時」になります。
 他の場所で確実に思い出せるように、こう言ったキーワードは大切だと思います。

 過去の質にもつながってしまう未来への課題は、時間と期待と供に膨らんでいきますが、これは決して邪魔なお荷物にはなることなく、人生を楽しいものにしていく糧となるはずなので、楽々背負っているバックパックの中に詰め込んでおくことにします。

 そんなこんなで、ゆっくり観光しても早足で回っても、半日足らずでまわりきれてしまえるナイアガラを堪能してトロントに戻ってきました。
 2回目のトロントではバスを乗り継ぐだけで滞在はしませんでした。これで予定していた東カナダのメニューは全てやっつけ、後は約3日間のバス移動でバンフまで帰るだけとなりました。カナダ一往復を締めくくる3日間のバス移動。筋金入りの旅人を名乗るからには、この程度の関門に対して文句一つ口にすることは許されないのです。

 この時間をつかって今回のプチジャーニーを振り返ってみました。
 かなりのハイペースで長距離を移動した割には、特に飛び越すことなく見所を抑えることができました。

 乗馬では速度を四段階に分けて表します。
 一番ゆっくりな「WALK(歩く、遅足)」、
 リズミカルに速度を上げた「TOROT(速足)」、
 ジャンプができるほどに速度をさらに上げた「CANTA(駆け足)」、
 競馬なのでお馴染み、最速の「GAROPU(最速の駆け足)」です。
 僕は馬の乗り方をオーストラリアで覚えたので英語名のほうがしっくりきて、日本語名がいまいちさだかではありません。辞書で調べたらキャンタとギャロップの区別がなく、同じ「駆け足」になっていたのでとりあえずここではそう訳しておきました。

 今回のプチジャーニーをこの速度基準に当てはめてみると、トロットといったところでしょう。
 本当は歩いたり止まったりしながら、もっとその土地のことを知っていきたいところですが、そうも言っていられない時があるのです。
 今はまだ速さ等の新記録を求めているわけではないのでギャロップをする必要はないし、空路を使ってピョンピョン飛び越しながら先を急ぐキャンタも避けたいのです。
 今のスタイルでの旅はトロットが最速としておきたいのです。

 その最速ペースで回った東カナダ。
 あえて一言で表すなら、
 「今までで最も難易度の低い旅」
と言ったところでしょうか。

 これはバカにしているわけではありません。何事も順序を踏むことは大切なことなので、外国初心者にはうってつけの場所だと思います。
 僕の個人的な意見なのですが、安全且つ旅がし易い外国トップ3をあげるなら、

 NO.1 ニュージーランド
 NO.2 オーストラリア
 NO.3 カナダ

 そしてその次にヨーロッパがくるような気がします。やっぱり先進国で英語圏というのは大きいのではないでしょうか。
 オーストラリアとカナダでは、オーストラリアのほうが旅行者人口が多いことと安宿へのアクセスが楽なこと、そして公用語がカナダはフランス語が少し入ってくることに対しオーストラリアは訛っているとは言え英語一本というところが順位に影響しました。
 一般的に見たらこの順位なのですが、今回にした僕のカナダの旅がオーストラリアよりも簡単だと感じてしまった理由は、オーストラリアでの旅が旅の出発地点であり、人生初めての外国であったのに対し、今は旅5年目で旅技術が上がったことがそう感じさせたのでしょう。

 そしてカナダ全体の名所の中で、世界にある他の名所と比較しても特別パンチが効いているのは、カナディアンロッキーと北極圏(もしくは亜北極)ではないでしょうか。
 別に自分が住んでた土地をひいきして言っているわけではなく、地球規模での視点と人間から見て特別な環境にあり特殊な経験ができる所と言うと、どうしてもこの2つがあがってくるのです。
 世界に通用するという意味では「ナイアガラの滝」、「東カナダの紅葉」、そしてバイソンと呼ばれるバッファローが群れを成している地域、世界遺産にも指定されている「ウッドバッファロー国立公園」も入ると思います。

 なにはともあれ、東カナダでは武器を振り回す必要もなく温厚に世界に通用する名所を始め、数々の思い出となった名所を回る事ができました。

 トロントの街中を歩いていて一つ気づきました。
「みんな、歩くスピードが速いな」と。
 大阪とまではいかなくてもバンフから来た僕には確実にそう感じました。
 正に「Walk」ではなく「Trot」です。

 時間命の大都会、当然と言えば当然です。
 いくら僕が速足で旅を進めているからと言っても、社会から見たらこの旅の期間というのは「止まっている時間」とみなされるのでしょうね。
 毎日きついスケジュールの中動いているのにもかかわらず、仕事をしてお金を稼いでいなければ「遊んでいる、なにもしていない時間」とみなされてしまうのは少し悲しい事実です。もちろんきちんとした仕事と定収入があったとしても、日々の生活の中でたいして成長をしていない人は沢山いるはずです。しかしながら、今僕がそこと比較したところで何も始まらないだろうし、比較する必要もないと思いますので、僕は僕の方向性で誇りあるトロットを踏んでいこうと思っています。

 こんな感じで今回のプチジャーニーの「おさらい&ダメ出し」、そしてバンフ生活の再スタートのことを思い浮かべていると、時間は瀑布のごとく流れていってしまうのでした。

 なんとかこの流れを止めることはできないか・・・、
 いいえ、そう考えるのは止めておきます。
 おとぎ話の悪玉は根拠のない「世界征服」と「永遠の命」を求めたがるものです。
 善玉戦士はいつだって「限られた時間」を楽しむものなのです。
 旅もマッサージもオーロラも、限りがあるから楽しいのかもしれません。
 人生もしかり!

 水が海・川・湖である時間は長いけど、滝でいられる時間は本当に短いのです。
 だから滝は人の目を惹き付けるのでしょうね。

 自分の人生が締めくくらんとする時にも、おさらいやダメ出しをするのかもしれません。一生の中で人の目を惹き付けていたほどの「瀑布な時間」は一体いつだったのか?

 そう振り返る時が来ると思うと少し怖くも悲しくもありますが、きっと瀑布な時間はもちろんのこと想い返している間には数絶え間ない「想いだし笑い」が溢れ出すこと目に見えていますので、命尽き果てるまで楽しみがあるのです。

「自分の一生の中での三大瀑布な時間は、いつといつといつですか?」
 そう、自問自答した時に選びきれないほどの選択肢を増やし続けていくつもりです。

 帽子に挿したメイプルの葉も、もうボロボロです。時間の流れは予想以上に速いのです。
 うかうかしていると、バスの中で過ごした時間が三大瀑布な時間になってしまうかもしれないですからね。

 さて、カナダ&アラスカの北米プチジャーニーを終えたこの後は?
 住み慣れた街「バンフ」に帰ってマッサージ治療院の再開です。
 さぁ、人がガクンッと少なくなる冬のバンフ。仕事は上手くいくのでしょうか?
 いよいよカナダも大詰めのラストスパートです。

 それでは、
 SEE−−YAA−−−−−−−−−−
                         FROM まさし