2003年5月 リゾート地のマッチ売り ■タイ編
 コープンクラッ!
 前回のタイ報告メール第二弾‘再会の鎖’より早1年。再びタイに足を踏み入れることになりましたマサシです。

 今回の目的は、‘従兄弟の結婚式’これ一本です。
 学生時代、結婚式場でアルバイトをしていたため、結婚式嫌いになってしまった僕ですが、今回は自閉症知的傷害者である僕の従兄弟(式を挙げる新郎の兄)の付き添い(ガイドヘルパー)として行きました。 また、タイに行き慣れている者としてツアーガイドの役割も果たすことから、ツアーガイド兼、ガイドヘルパー、名付けて「ツアーガイドヘルパー」ってまんまやんか! として使命を果たしてきました。
 今回タイにおいて身構えていた関門は、‘入国’、‘SARS’、‘結婚式’の3つでした。

 まずは入国。
 今年からタイ入国へのヴィザのチェックが厳しくなり、今まではヴィザが無くても潜り込めたのですが、何件か入国を拒否された例が出てきたそうで、それに付け加えSARSの影響もあって厳しさがいっそう増したとの情報を、日本の旅行会社で聞きました。
「タイごときのイミグレーションに引っかかるほど、俺は鈍臭くないぜぇ!」
と啖呵を切ってヴィザを取らずに出てきたものの、不安は隠せませんでした。
 韓国を出国する時に、出国カウンターで、
「タイのヴィザ無しでどうするんだ?」
と突っ込まれたこともあって、その場は無理無理ごまかしましたが、不安は増大しました。
 実は韓国で風邪をひき、熱も下がりきってはいなかったのでSARSチェックとの‘合わせ技一本’ってなことになった時には、言い訳のしようがないのです。
 おまけに体調が悪いものだから、飛行機にも酔ってしまって、もぅ ぐでんぐでん。

 自前のマスクで顔を覆い、目だけとびきりの営業スマイルを作り入国審査に挑みました。
 すると、なーんも聞かれず、あっさりスタンプポンっと押され、
「はい、どうぞ」って。
 ありゃ!?
 体温測定も無ければ、マスクも配られませんでした。
 滞在期間も行き先も聞かれない、今までで一番簡単な入国審査でした。

 第一関門をあっさりクリアーして外に出ると、第二関門のSARSが頭をかすめました。
 ですが、街中では誰一人としてマスクをしている人はいませんでした。
 世界でも有数の外国人街である‘カオサンロード’にもマスクを付けている人はいませんでした。しかし、やはり人は激減していて、あのカオサンロードが閑散としていました。
 どう判断してよいものやら迷いましたが、とりあえず風邪引きの僕は感染しやすいと思ったので、念には念を入れマスクを付けていました。

 とりあえず3日ほど様子を見て、旅行会社やバックパッカー達や地元の人たちに聞き込みしたところ、タイの観光客はSARSのおかげで都会では80%減、田舎では90%減っているとのことで、今いる旅行者は、よっぽどの強者か馬鹿かだそうです。とはいえ、基本的にタイではSARSに対して以前空港で食い止めたことになっているので、感染はないだろうということになっているのでした。だから地元の人はもちろん、旅行者もマスク無しで歩いているのでした。
 体調が回復してからは、僕もマスクを外しました。
 だいたい僕レベルで感染するぐらいの環境なら、今回の結婚式に来た僕の親類達はもちろん、その辺を歩いている人たちほとんどがSARSにかかっているはずだし、世界では他の病原体でバッタバッタと人が死んでいるのに、今さらタイムリーなSARSだけにビクツクのもおかしな話しだと思えてきました。
 いつものように僕は、免疫力を高める自然のアイテム‘バナナ’をほうばりながら、バンコクの臭っさい空気によって早く伸びてくる鼻毛を気にしているのでした。

 そんなこんなで、結婚式の日を迎えました。
 従兄弟と結婚するタイ人の女性が芸能人だったこともあって、マスコミ等を交えたど派手なパーティーが開かれましたが、これいって目に付いた特別興味深い行事も無く、無事終了しました。
 たまたま韓国ででも友人との会話に結婚式の話題が上がり、タイ式と韓国式に日本とは少し異なる共通点を見つけました。
 それは参加人数と御祝儀の金額でした。
「御祝儀とはあくまで気持ち」ということで、だいたい日本円にして2〜3千円といったところで、この金額は現地にでもけっして高くない金額なのです。
 そして誰でも予約無しで参加できるのです。だから人数も自然と増え、行きたい人が気軽に参加できるのです。どうです、これ?
 こっちが本当だと思いませんか?
 日本の挙式も披露宴も良い伝統として受け継がれている面もありますが、過剰な面も多々目に付くのではないでしょうか?
 金額や形態が変われば、少し遠出してでも出席してあげたかった友人の挙式が、ちらほら頭に浮かびませんか?
 ‘寿貧乏’なんて言葉は、一般人レベルでの付き合いでは無い方がいいと勝手に思いました。

 結婚式以外で嬉しい収穫が1つありました。
 それは、フランス人の‘再従姉妹(はとこ)’との念願の再会でした。

 僕が小学校に入学したかどうかぐらいの頃でした。フランスから来たこの家族に1度だけ会った記憶があります。子供だった僕は、言葉と髪・目・肌の色が自分と違う彼らに対して恐くて話しもできなかったし、接しようともしませんでした。その当時のわずかな記憶は今でも残っています。
 外国に血のつながった‘血族’がいるなんて、少し現実離れしているように思えていたので、ずっと気になっていたし、家族の話題の中にもちらほら出ていたため、会ってみたいという想いはその度に膨らんでいきました。そしてその想いは、英語をある程度話せるようになったここ近年、さらに強いものへと変わっていったのです。
 父の従姉妹がフランスに嫁いでできたこの家族、娘が2人姉妹で年齢もほとんど僕と同じくらい。気さえ合えばいい友人になれると思ったのです。
 どの道、来年にフランスへ行く予定だったので、その時にでもと思っていたのですが、一足早くチャンスが来ました。

 はい、そしてご対面。
 第一印象は「あらっ、カワイイ!」。 確実に面影を残したその顔は、子供の頃の記憶のまんまでした。そしてもっと驚いたことは、2人とも日本語が話せることでした。僕が英語で話し掛けたら日本語が返ってきたので、最初は挨拶程度かな?と思いきや、どんでもない。子供の頃から母親に日本語で育てられたため、バイリンガルに育っちゃってました。っと言っても流石ヨーロピアン、英語も僕なんかよりはずっと堪能なので、ほとんどマルチリンガルです。

 なんだか不思議な気分でした。あんなに心構えをしていたのに、あの記憶の中の少女は今、日本語を話しているのですから。 ナイスです。おばさん!
 人柄も素敵でした。フレンチの上品な香りの中に、日本の可愛らしさあり!って感じ。
 1週間足らずのこの期間、僕は自分の役割に集中していたため、満足な会話もできなかったけど、近い将来、もっと仲良くなれる‘嬉しい手ごたえ’を感じることができました。フランスに嫁いだおばさんも、その旦那さんも気さくでいい人でした。パリ在住のこの家族。パリに行く楽しみが1つ見つかりました。

 そんなこんなでバンコクを後にし、南に下って、今プーケット。
 プーケットなんて軟弱な所は行く予定から外してあったのですが、韓国で世話になった友人とプーケットでの再会を約束してしまったため、少し足を伸ばすことにしたのです。
 それにしてもここは、こってこての観光地。物価の高さは国内一です。バックパッカーなんて居やしません。
 バカンスをとる暇も無いし、とる必要もない。
 そんな僕が、バカンスをしている人たちを見ていたら、ある光景が蘇ってきました。

 それは日本で仕事を探している時、会社説明会の後サラリーマンの人波を、座って眺めている自分がいました。

 仕事が無い時に、仕事のある人を見る。
 バカンスをとってる場合じゃないのに、バカンスしている人を見る。

 同じですよね。
 そりゃー細かく言えば、
‘仕事が忙しくてバカンスをとってる暇がない’のと、
‘仕事がない! 仕事しなくちゃいけないため、バカンスどころの話じゃない’ってのとかに分けられますが、結局、今自分ができないことを目の当たりにしている状況には変わりないですよね?
 そんな時に感じる、なんとも言えない今の自分に対しての疑問や不安は、自分を見つめ直したり再確認するためのいい機会です。

 僕のこの場合は、‘マッチ売りの少女’が家の中の暖かい家庭風景を窓から眺めているのとは、少し違うような気がします。
 僕は今の自分に無いものや異世界を見て、メラメラと燃え上がります。決して無い物ねだりや羨みの眼差しではないつもりです。

 そう言えば‘浪人生のメリット’も似たようなものがありますよね。浪人生の場合には確かに羨みの眼差しはあるものの、疑問や不安に接し、自分を見つめ直す機会が持てることは、長い目で見ていい経験だと僕は考えています。僕は浪人生活をしていませんが、浪人生の友人と接したり予備校に一緒に顔を出したりしてれば、このくらいのこと感じ取れます。

 僕のマッチの数は、踏んだ経験の数と出会った人の数だけ増えていきます。

 数だけじゃーありませんよ。クォリティーには細心の注意を払ってありますし、何よりもいいのは、このクォリティーはこの先もグングン高まっていくでしょう。

 金は無くとも、マッチの数と質には自信あり! です。
 石炭買えずともマッチを燃やせば、機関車だって走らせようぞ!
ってなんだか例えが訳解らなくなってきちゃいましたし、ちょっと営業トークっぽくなってきちゃいましたね。

 一時の灯火のようにすぐに消えてしまわないような明かりを、僕のマッチは灯してくれるはずなのです。

 ‘経験のマッチ’の消費は惜しみません。
 ‘出会いのマッチ’を灯した時には、みなさん出てきて下さいねー。

「あれ? おまえのマッチ、もう消えちゃった」
「こいつのマッチ、いつも肝心な時につかないんだよなー」
なんてことないよう、みなさんも 湿気らないように気をつけましょうね。

「あっ、お客さん、いいのが入荷されましたよ。ちょっと下品な部分もあるかとは思いますが、なかなか興味をそそられる逸品で、名づけて‘韓国の青い鳥’! これがまた・・・え!? もう読んだ? ほぉー これはこれは仕事がお早いですね。取って置きの情報がありますよ。これからどんどん‘奥地’と言いましょうか‘僻地’にて仕入れを行いますので、ちょーっとお手元にお届けできるまでお時間の方かかってしまうかもしれませんが、十分御満足していただけるかと思いますので、しばらくしましたら、お時間の空いた時で結構ですのでおタバコをおくわえになって、パソコンも立ち上げマウス片手に準備万端でお楽しみ下さい。私が申し上げるのも何なのですが、おタバコはお体にあまりよろしくありませんので、もしお口が寂しくなったのでしたら、気分転換を兼ねてベランダにてシャボン玉など吹かれてはいかがでしょうか? 長いことお吹きになられていないことと・・・え? 自分の価値観とマニアックな趣味を他人に押し付けるな・・・ですか? はぁ、これはこれは出過ぎた真似を致しまして申し訳ありませんでした。それでは‘ヒマワリの種’なんていかがでしょう? 始めは面倒に感じられるかもしれませんが、しだいに片手で・・・え? 中国人じゃないって? そうですねー、それなら・・・え? うるさい? 失礼致しました。それではこの辺で・・・」

 取り留めの無い文章でしたが、今回は「僕はSARSになってませんよ」と言うためだけの報告メールとぐらいに受け取って下さい。
 これからもメラメラ燃えていきますよ。暑い場所では、燃えるかダレるかのどちらかしかなさそうですからね。

 さて、この次は?
 さらに南へ下がります。マレー鉄道に乗ってマレーシアへ。
 その後は、スマトラ島に渡り赤道を越えます。あぁー、暑そー!
 それでは。
 SEE−−−YAA−−−−−−−−
                        FROM まさし